フレームが顔に沿うようにカーブするサングラスは多くのアスリートに愛用されています。顔にピタリとフィットしてズレにくい安定感はスポーツハイカーブ最大の特徴です。しかし視力が悪い方は度付きにする必要があります。メガネの正美堂ではスポーツハイカーブサングラスの度付き加工も承っております。

ハイカーブレンズ
ハイカーブフレームを度付きにする場合には、使用する眼鏡レンズもフレームカーブに合わせたハイカーブレンズで作ります。読んで字のごとくカーブが深いレンズという意味です。通常のメガネレンズのカーブが1~3カーブなのに対してスポーツサングラスには6~8カーブのレンズが使用されます。

ハイカーブレンズはレンズの光軸が視線の方向に対して傾くことで、レンズ度数に誤差が生じます。近視度数はやや強く、横方向には更に強い近視度数(横乱視の発生)となりますので、誤差を計算して補正する必要があります。加えてレンズが傾斜することによってプリズム誤差というものも発生しますので、こちらにも補正が必要になります。

左の写真の白いボールに注目すると、スポーツサングラス越しの方がピンボケに見えるのが分かります。また芝生も歯科医の外側に向かうほどボヤけて写っています。これはレンズが傾斜している事による効果で、本来の見え方との間に誤差が生じている事を示しています。
それではこのページのトップの写真のサングラスを例にとって誤差を計算してみましょう。レンズメーカーごとに色々な方法で補正が行われますが、この会社のアプリが分かり易いので今回はこちらのアプリの例をご紹介します。(LION-SIN のレンズカーブは8カーブですが、こちらのアプリは6カーブまでしか表示できませんので、6カーブで計算させています。)
サングラス:SWANS LION-SIN
レンズ:ne = 1.67 球面レンズ

一番上は本来の処方度数です。レンズカーブを6カーブ、そり角(レンズの傾斜)を24度として計算します。中段に表示されているのは誤差によって変化した度数です。度数は0.25刻みですので、近視で1段階、乱視に至っては横方向に3段階以上の誤差が生じているのが分かります。またプリズム誤差は片眼0.38、両目で0.76度Base Outです。これをなるべく違和感なく使える様に補正した度数が下段の度数になります。驚くほど違いますね。近視は4段階、乱視は3段階(方向は縦横が真逆)、プリズムは両眼で0.50Base IN という結果です。
(この補正を何%効かすのかは選択式になっています。)
今回は6カーブで計算していますが、8カーブではもっと誤差が大きくなり、補正値も変化します。
続いてレイアウトを計算します。

レンズをスケールの上に水平に置いて、最大の横幅を測ります。このレンズの場合 66ミリである事が分かります。

左図にはサングラスのレンズ形状が表示されています。赤い円はレンズの外周を表しています。レンズの横幅は最大で66ミリ、鼻幅(レンズとレンズの間)は13ミリです。メガネの製作には左右のレンズの中心間距離(FPDと呼びます)が必要で、これはレンズの最大幅と鼻幅を足し算した値を用います。(実際にはレンズが25度傾斜しているため、単純な足し算とは異なった値になります。)
お客様のPD値を68mmとして設定すると、左図のようなレイアウトになって、ギリギリ製作可能だと分かります。

左図の左上に、このフレームのFPDが72.6mmと表示されています。
ここでお客様の左右の瞳孔間距離(PDと呼びます)が68ミリなので、 レンズの内寄せ量は(72.6 – 68)÷ 2 = 2.3ミリ で、水平に置いた時のレンズ最大幅 を加算すると、66 + 2.3 × 2 = 70.6 ≒ 71ミリ径のレンズが必要と分かります。レンズの有効直径は73ミリなので、これはもう製作限界ギリギリです。
(レンズの外周から1ミリ程度はコーティング切れがあり、使えないからです)
以上、ハイカーブレンズの製作過程を順を追って説明してみました。ハイカーブ度付きサングラスを作る時には、ご自分の度数とPD値を知っていると制作可能か否かが自分でわかります。
私たちはなるべく広い範囲の度数に対応出来るように、常に情報収集に努めています。少し前には出来なかった度数が最近可能になったという例もあります。ハイカーブ度付きサングラスが欲しかった、という方はご遠慮なくお問い合わせください。いつでもお待ちしております。
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