最も一般的なレンズといえば、虫メガネでしょうか。虫メガネは遠視や老眼鏡に使われるのと同じ凸レンズです。それもかなり強度の。レンズは球体の一部をその赤道面と並行に切り取った形状をしています。
発光体(例えば太陽)からは四方八方に放射状に光が進んで行きますが、太陽はあまりにも遠くにある為その光線は皆互いに平行になっています。この平行光線が凸レンズに入射した場合、学校ではすべての光線が1点に集まってその点を焦点と呼ぶという風に習います。

しかし実際にはそうはなりません。これはレンズの中心に極めて近い部分に限って成り立つ話であって、中心から離れて入射する光線に対しては成り立たないというのが事実です。レンズに入射する光線は光軸に極めて近いという近似をして計算されています。なので入射光線が光軸から離れれば離れるほどレンズは理論通り焦点を結ばなくなってゆきます。

凸レンズでしたら上の図のように光軸から遠い入射光線は近軸光線よりレンズ側に寄った位置で焦点を結びます。要するにボヤけてしまうのです。これを球面収差と言いますが、単レンズの代表的な収差です。
この収差を取り除くために写真機の開発では何枚もの凸レンズと凹レンズを組み合わせて様々な撮影用レンズが開発されました。しかしメガネでは1枚のレンズで収差を取り除かねばなりません。それが非球面レンズです。今でこそ一般的になりましたがメガネに非球面レンズが採用されたのは昭和の終わりごろで、わりと最近の事です。非球面レンズは光軸から離れた部分のカーブが浅くなっています。収差が減るというメリットと、レンズのカーブを浅く設計するので薄型化できるというメリットも併せ持っています。大変優秀なレンズであると言えます。以前レンズメーカーで働いていたころ、球面レンズを研磨する機械がありました。表側が球面なので単純な機械で研磨できますが、非球面レンズはそういう研磨機械では製作不可能なので、コスト高になります。当然非球面の精度(精密度)にも製作する工場によってバラツキがでてしまいます。この辺の開発の試行錯誤の様子がYoutubeにアップされていました。町工場のおじさんが昔のパソコンでプログラム(BASIC ?) して作って行く様子は感動ものです。ですが、URLがわからなくなってしまったので、発見したらまたご紹介しようと思います。
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